当院の臨床症例の一部掲載

肩が凝り両腕が重だるい30代女性

症例
患者:30代女性、会社員
主訴:肩が凝り両腕が重だるい。

現病歴:学生時代から重い荷物を持っていたが気にならなかった。社会人になって、パソコンを扱う仕事になり、出先までパソコンや資料が入っている鞄を持って移動することが多くなった。

 1年前から肩こりが強まり、パソコン作業や電車のつり革につかまっていると両腕が重だるい。腕を下げていれば症状は楽になる。

身体診察:ルーステスト(+)

鍼灸治療と経過:パソコンやつり革で腕の重だるい症状が誘発することから、「胸郭出口症候群」と推測した。肩こりの治療に加え、天牖、天窓、扶突、斜角などを治療。1~2週間に1回、12回鍼灸治療をおこない80%緩解した。

胸郭出口症候群の特徴
 胸郭出口症候群は第一肋骨と周辺の筋群で形成される胸郭出口において、さまざまな原因により腕神経叢、鎖骨下動静脈が圧迫・刺激され肩甲帯、上肢の神経障害、血管障害を引き起こす疾患です。

 頚から肩、腕にかけて痛み、しびれ、だるさなどの神経症状と、冷感、浮腫などの血管症状です。なかでも重だるいという痛みの性状と手先の冷感は日常臨床で訴えの多い症状です。肩関節疾患でも腕が重だるくなりますが、その場合は肩関節を動かすと、肩関節が痛みます。

 また、腕を中間位で挙上する姿勢、たとえば日常生活では、電車のつり革につかまる、長時間パソコンをする、ドライヤーをかける、歯磨き、植木ばさみを使う、自転車に乗る、手芸をする、などで症状が誘発されます。 

 

 

2018年02月20日

頚や肩甲間部がこり腕や手がしびれる40代男性

症例
患者:40代、男性、会社員
主訴:右頚から肩甲間部にかけて凝り、右上腕部外側から親指と示指がしびれる。

現病歴:10数年前から、肩こりがあり時々マッサージを受けていた。
 今回、2か月前から徐々に肩こりだけではなく、腕から指先がしびれるようになった。

 現在、右頚から肩甲間部にかけて凝り、右上腕部外側から親指と示指がしびれる。上を向くとしびれは強くなりつらい。夕方に症状が強まる。下を向いていると楽。
普段、肘枕をしてテレビや読書をしている。外傷歴なし。

身体診察:右頚椎6・7番の傍らを押すと圧痛があり、右上腕部外側から親指と示指にしびれが再現する。

圧痛は右C6、C7、天柱、風池、肩外兪、膏肓、肩井、臑会、手の三里に認められる。右手母指、示指 触覚鈍麻(+)

鍼灸治療と経過:増悪因子が上を向くこと、右上腕部外側から親指と示指のしびれから「頚椎症性神経根症」と推測した。圧痛部位に鍼治療を5日に1回、9回目で痛みは80%軽減。その後、2週間に1回、4回おこない100%緩解した。

生活指導:肘枕は頚椎に負担をかけるので改善をお願いした。

頚椎症性神経根症の特徴
 頚椎症性神経根症は頚椎での神経の圧迫で頚、肩、腕へ痛みやしびれを引き起こす疾患です。
頚を動かすとズキン、ズーンなどの痛みとしびれが現れます。日常生活ではうがいをする、高い
ところの物を取るなどの動作で誘発します。


2018年02月26日

パソコンで肩甲間部の痛みを訴える50代男性

症例:50代、男性、会社員
主訴:右肩甲間部の痛み

現病歴:数年前から、頚・肩こりがあった。3か月前から、右肩甲間部が張るようになったが、一晩寝ると楽になるので仕事には支障はなかった。

2週間前から、パソコン仕事をしていると右肩甲間部がビリビリと痛み、夕方になると仕    事に集中できなくなった。現在、長時間のパソコン仕事がつらい、休日に症状は軽くな    る。腕や手に痛みやしびれはない。外傷歴なし、食欲あり、睡眠良好、大・小便普通。 

身体診察:右側の第5と6頚椎の傍らに圧痛と硬結を認める。

鍼灸治療と経過:年齢や長時間のパソコンによる頚部の伸展姿位、痛みの範囲から「椎間関節性頚部痛」と推測した。1週間に1回、鍼灸治療を行い4回目で90%緩解、その後2~3週間に1回継続治療を行っている。

椎間関節性頚部痛の特徴
 椎間関節性頚部痛は退行性変性の過程で頚椎椎間板変性によって椎間板空が減少し、椎間関節の荷重分担が増加することによる機械的ストレスや、これに引き続いて生じる変形性変化(変形

性関節症)によるもの、自動車追突事故やいわゆる寝違えなどの力学的ストレスによって椎間関節包や滑膜ひだに炎症を生じることによって発症すると考えられています。。

 痛みは障害部位によって、後頭部、項部、肩甲骨周囲に生じ、頚椎の傍らに圧痛を認め、頚椎の伸展(上を向く)・回旋(振り向く)姿位で痛みが増強・誘発します。

2018年03月02日

起床時から頚が動かせない20代女性

症例:20代女性
主訴:頚が痛くて動かせない
                              
現病歴:昨日、くしゃみをした瞬間、頚に痛みを感じた。痛いので、自分でマッサージをして就寝した。痛みで目が覚めることはなかった。今朝、起床時から、頚が痛くて動かせなくなった。

現在、頚に少しでも力を入れるとズキンと項部が痛む。振り向いたり、飲み物を飲むと増悪し、右側の肩上部と肩甲骨の内側、前胸部につっぱるような痛みが放散する。痛みが出ないようにじっとしていれば楽。荷物を仕分ける仕事をしているので支障がある。早く治したい。

治療と経過:「頚椎捻挫(いわゆる寝違い)」と推測し、頚椎傍ら圧痛点、天柱、下風池、扶突、全身調節、等のツボを使い、1週間に3回鍼灸治療を行い90%緩解した。

頚椎捻挫(いわゆる寝違い)の特徴
X線検査に異状なく、起床時より項部、後頭部、肩部の鈍痛と頚椎の運動制限をきたす急性の疾患で、筋・筋膜性の痛みを生じたものです。

頚椎捻挫はいわゆる寝違いのほか、スポーツや交通事故などの外傷で多くみられ、筋、靱帯、椎間板、椎間関節の痛みを生じます。

 

2018年04月06日

歩くと殿部に痛みが放散する40代女性

症例:40代女性
主訴:腰殿部痛

現病歴:2~3年前から時々腰痛を感じたが、湿布をしていれば痛みは治まっていた。今回は、2週間前から腰痛が現れ湿布をしたが、治まらなかった。1週間前から殿部も痛くなった。

心配になり、整形外科を受診し、X線検査の結果は異常なしといわれた。営業で歩くので支障あるが休みたくない。仕事を続けながら治したい。

現在、右側の腰椎付近が痛み、歩行すると殿部に痛みが放散する。高い所の物を取る時、腰を反ると増悪する。横向きで休んでいれば痛みはない。

食欲あり、睡眠良好、大小便正常。

身体診察:
腰椎後屈痛(+) 前屈痛(-) 圧痛は右側の腰椎傍ら(L4/L5)、大腸兪に検出

治療と経過:「腰椎椎間関節性疼痛」と推測し、腰椎傍ら圧痛点、大腸兪、全身調節、等のツボ使い、鍼灸治療を行った。第2回7日目、前回の治療で腰・殿部痛は80%緩解。2~3週間に1度治療を継続し仕事を続けている。

腰椎椎間関節性疼痛の特徴
腰痛と殿部痛が特徴的ですが、ときに下肢痛および下肢のしびれを伴うことがあります。同一姿勢(たとえば台所仕事や長距離運転)で悪化し、軽く姿勢を変えるなどで軽減します。朝起床時

の痛みを訴えることが多く、動いているうちに痛みは軽減してきます。腰椎の後屈(腰を反る)により痛みが増強することが多く、腰椎傍に圧痛があります。


2018年04月16日